Faculty of Agriculture

農学部

持続的な食循環プロジェクト

「農学部」×「ふぁーむ牧」×「石野味噌」による
極上オリジナル白味噌を開発!

2020年10月、龍谷大学農学部は「持続的な食循環プロジェクト」の一環として、学生が農業実習をおこなっている牧農場および農事組合法人ふぁーむ牧で収穫した近江米と大豆を使ったオリジナル白味噌を開発し、販売しました。学生たちが育てたお米と大豆を使用し、懐石料理用の「極上仕上げ」の品質の白味噌に製造してくれたのは、京都を代表する老舗味噌店・株式会社石野味噌。できあがった白味噌は、農学部の全学生や牧地区の住人に配られたほか、商業施設フォレオ大津一里山でも学生が販売し、3時間で100袋が完売するなど大きな反響を呼びました。このプロジェクトを記念して、開発に携わったメンバーによる対談をこないました。(2020年12月22日)

<参加者>

龍谷大学農学部長 / 資源生物科学科
大門 弘幸 教授

今回のプロジェクトの発起人でマメ科の専門家。長年マメ科植物と根粒菌の共生について研究しており、緑肥作物の専門家でもある。世界の食糧危機を乗り越えるべく、持続可能な環境負荷の少ない作物生産体系の確立をめざして研究をおこなっている。

農事組合法人ふぁーむ牧 組合長
古家 五十次 さん

白味噌の原材料である厳選された「近江米」と滋賀県奨励品種である大豆「ことゆたか」を生産。瀬田キャンパスの近くで23ヘクタールの畑を営む「ふぁーむ牧」は環境配慮型の農業に取り組み、農学部創設時より学生の実習農場を提供している。

株式会社石野味噌 代表取締役社長
石野 元彦 さん

天明元年(1781年)創業、230余年以来地域の素材を大切にして味噌づくりをおこなってきた株式会社石野味噌の9代目社長。2017年度より龍谷大学親和会(保護者会)の役員を務める縁から今回のプロジェクトに参加。

龍谷大学農学部 資源生物学科 4年生
玉置 幹 さん

1年生から食の循環実習を受講し、農場における農産物の生産から収穫に携わる。今回は学生代表としてこの対談に参加。実家がパン屋ということもあり、作物学研究室(大門教授担当)でコムギとマメ科の混作の研究をしている。卒業後は兵庫県の農業技術職に内定が決まっている。

あえて「白味噌」が成功の秘訣だった

大門教授

農学部長の大門です。はじめに私から今回のプロジェクトについて簡単にご紹介します。2015年に龍谷大学は農学部を滋賀県に創設しました。地元である滋賀の農業に貢献できる技術と人をつくるという使命をもっていると思っています。滋賀に限らず、農業生産者自らが加工品を作って販売する6次産業化が今後の農家経営の要になると農水省も推進していますが、現状の農村では人口減少や高齢化で、そのための人材もアイデアも不足しているのが現状かと思います。そこで大学として、何か参考となる事例をつくれないか、また学生にも自分たちがつくった作物を商品として世に出す過程を経験してほしいと考えていたときに石野さんに出会ったのです。

石野社長

2018年の夏に親和会(龍谷大学保護者会)の集まりで大門先生にお会いして、大豆の専門家だと知りました。そこで、実は私は、米と塩と大豆から作る味噌を生業としているんです…と自己紹介しまして、何か一緒に商品づくりができないかという話に進みました。
はじめは単に味噌という話だったのですが、やはり弊社の看板商品は白味噌ですから、私の提案で白味噌にさせていただいたんです。京都のお味噌といえばやはり白味噌ですからね。

玉置さん

私の実家もお正月は白味噌のお雑煮です。白味噌というのは京都ではいつ頃から作られているんですか?

石野社長

平安時代にはもう作られていたと言われています。当時は砂糖が貴重なものだったので、その代用として白味噌が作られるようになったとか。ただ白味噌もお米をふんだんに使います。お米も当時は高価で貴重なものでした。ですから白味噌を食していたのは天皇家や貴族だけです。それが時代を経て一般庶民に伝わり、関西地方でお正月だけ特別に白味噌のお雑煮が作られるようになったのではないかと言われております。白味噌は京都発祥の食文化ということで、石野味噌のアイデンティティとして自負を持って作っております。

大門教授

白味噌は大豆の倍以上の米麹を使って作ると聞きまして。であれば、滋賀県は米どころでもあり、特にふぁーむ牧さんは厳選された近江米を作っていらっしゃるので、これは活かせるな、と。

古家組合長

牧地区のあたりは、昔から献上米といって天皇家にお米を出す土地なんです。水が良くて大戸川の氾濫によって土がよく肥えていて。また、日較差といいますが、昼の温度と夜の温度差が大きいというのがよい農場の条件で、それも揃っています。また、琵琶湖が近いこともあり、肥料や農薬、除草剤を極力使わない環境に配慮した農業をおこなっています。今回使っていただいた大豆も滋賀県の奨励品種である「ことゆたか」で、ふぁーむ牧でも昔から作っている大豆です。琴の音のようになめらかなお豆腐ができるということでつけられた名前だそうですよ。

玉置さん

今回私たちが生産したお米と大豆で作った白味噌は、石野さんがいつも作られている白味噌と何か違いはありましたか?

石野社長

今回、学生の皆さんが手がけられたお米で作った米麹は色がとても綺麗でした。香りもよかったですね。お味噌としても甘みと香りが強く、大変美味しくできました。発売時期も年末ということでもあり、ぜひ学生の皆さんにも白味噌のお雑煮を作っていただきたいと思います。お雑煮って一番地方色が豊かな食べ物ですよね。全国から龍谷大学に来られた学生さんは、せっかく京都の大学に来たのですから、これを機にぜひ一度、京都の食文化を味わってみてほしいです。

大門教授

みんなで育てたお米や大豆でできた白味噌ですから、みんなで味わおうということで農学部の1年生から大学院生まで農学部だけで2000個を配ったんですよ。コロナ禍で全員に配るのはかなり大変だったようですが、教務課の皆さんががんばってくれました。

玉置さん

今年の年末年始はみんなステイホームですから、私もお雑煮つくってみようと思います。

大門教授

京都の方はやはり年末には白味噌をお買い求めになりますし、リリースした時期もぴったりでしたね。このオリジナル白味噌を4トンも生産していただきましたが、ほとんどなくなったということで、大成功でした。これは石野さんのブランド力が消費者の方には響いたのではないでしょうか。しかもお値段も1パック500グラムで税込み540円と市場価格の半額以下でご提供していただきました。これは本当に石野さんに感謝しなければなりません。

深刻な農村の疲弊、
打開するには若い人の力が必要

玉置さん

私は来春から兵庫県庁に就職して農業普及に関わっていくのですが、農業法人が6次化を進めていくにはどんな課題を抱えていますか?

古家組合長

いろんなところで6次化の話は出ますが、今はどこの生産地でも高齢化で担い手が少なくなってきています。だから実際に何かしようというところまではいかないのが現状です。

大門教授

北海道の大規模農家ならともかく、中小の農家にとって6次化は言うは易く行うは難しが現状です。若い人が不足しているから新しいことができないのか、新しいことをしないから若い人が集まらないのか。どちらもあると思います。若い人に自分が生産したものが消費者に届く面白さを感じてもらったり、この地域を守っていかなくてはならないと感じてもらったり、そういった発想を持ってもらうには何か肝となる魅力が必要です。そのためには今回の白味噌開発のようなこともきっかけの一つになればと思います。大学として今後もこういう事例をどんどん出していきたいです。龍谷大学農学部は、「知」の創造はもちろんですが、教育機関としてしっかりと「人」を作ることでも地域に貢献したい。これは学部長としていつも思っております。また今回のプロジェクトを機に、生産者の方にも新しいことへの興味を持ってもらえたらいいのですが。

古家組合長

実際は日々の農作業だけで精一杯です(苦笑)。玉置くんは、4年間農業を学んできてどうですか?やっぱり大変と思われました?

玉置さん

実際目の前で作物を育て、成長していく過程を見るのはとても面白いですし、作物に触れること自体が楽しいです。そこには大きなやりがい、生きがいが感じられます。今後ますます農業従事者の高齢化が進んでいくなかで、これまで農家さんが培って来られた栽培技術を自分たちがメモリーカードのような役割として受け継いでいきたいと思っています。

大門教授

玉置くんにはぜひ大学に残って研究を続けて欲しかったんだけどなぁ…。いろんな現場を見て、いつかまた研究畑に戻ってきてください(笑)。商品を作るにしても、今や消費者ニーズが非常に多様化していますから、単に安ければいいのではなく、どう付加価値をつけていくかが大切で、アイデアを出せる人材が不可欠ですよね。そのためにはまずは生産の現場を知ることが重要です。現場を知らなくては何が作れるのかがわからないですから。まさに「事件は会議室で起きているんじゃない!」というやつです(笑)。農学は現場が命です。

玉置さん

本来なら作物を作って終わりのところを、今回石野さんが白味噌として加工してくださって、販売し、消費者の方が自分たちの作ったものを手にとってくださった。そういうプロセスをみることができてとても勉強になりましたし、嬉しかったです。ちょうど私もパン用コムギを栽培して収穫したのですが、まだ加工するところまでできていないんですよね。ちゃんとやらなきゃ(笑)。

石野社長

大学とこのようなコラボレーションができたのは、私にとってもとても光栄なことでした。ぜひ来年もやらせていただきたいです。白味噌をつかった田楽味噌を作って、ふぁーむ牧さんの大根や人参とセットで売るのもいいですよね。

古家組合長

実は大豆の出来の良さは今回のお味噌に使った昨年度収穫のものより、今年の方がいいんです。なので、ぜひ今年の大豆を使ってまた白味噌をつくってほしいです。
昔から滋賀県では、「お講汁」といって、浄土真宗の寺の行事(報恩講など)で白味噌をつかった野菜ばかりの精進汁がふるまわれます。そんなのもいいかもしれませんよ。

大門教授

レトルトの「お講汁」なんていいですね。水田の脇で具材にする里芋なんかも作れますし。賞味期限が長いのもいい。
今回は、この白味噌を使った料理をプロの料理人の方々からもレシピをいただき、農学部食品栄養学科の学生たちもレシピを考えました。本学の農学部には食品関係の先生方もたくさんおられるので、他にいろいろと広げていけたらいいですね。
ますます楽しみになってきました(笑)。石野さん、ぜひ来年もよろしくお願いします!

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